教育講演
民間信仰の功罪 佐藤 時治郎(弘前大学名誉教授)
青森県の津軽地方では江戸時代に始まるイタコとゴミソによる長い信仰の時代があった。ゴミソは今ではカミサマという方が通じやすい。一般にイタコは死者降ろし、ゴミソは神降ろしとして区別されるが、イタコの本来の仕事は自分のテリトリーを巡って歩き部落の農作物の予想、住民の健康や運勢を占い、助言をするのが本来の努めであったという。
ゴミソは自己の憑き神の力をかりて信者にとりついた憑き物を追い払い、病気の治療を行う。イタコは盲目、弱視などの女性の視覚障害者が師匠について修行を積み、「許し」という免許を得て商売をするものである。ゴミソは自身あるいは家族の病気や悩みが原因で祈祷や祈願をしている最中に神懸かりとなり、その体験を契機にゴミソの道に入るので家系に同様の体験者が多い。
両者とも地域での社会貢献について評価できる反面、信者に災禍をもたらす場合もある。その一事例を最後に述べることにする。
略歴
1948年 東北大学医学部卒業。1956年 東北大学医学部講師。1957年 東北大学医学部助教授。1966年 弘前大学医学部教授。1988年 弘前大学医学部名誉教授。1988年 大館市立総合病院院長。1990年 弘前愛成会病院院長。1993年 財団法人愛成会顧問。1999年 津軽広域連合介護認定審査会委員。2004年 弘前神経科学研究所所長。
著書
精神鑑定集、佐藤時治郎教授開講10周年記念、非売品、弘前、1977。津軽と原風景−太宰とイタコ、神経心理、15巻1号、1999。視覚障害者の語り−イタコとボサマ−、目の辞典、朝倉書店、東京、2003。他多数。